発達障害が学べるラノベ9│沈黙の帰り道(ザ・ウェイ・ホーム)

ラノベ

「ねぇ、あたしこっちの方向だから!フツミヤくんはあすちゃん家まで送ってってね!」
交差点で千優が手を振った。

「おい、本当に一人で大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫! じゃ、また明日ね〜!」
元気な声を残して、千優は反対方向へ駆けていった。

……気づけば、俺と平城の二人きり

「……」
「……」

(いや、気まずすぎるだろ。)


耐えきれず俺が話しかける。
「えっと……平城って、千優と仲いいのか?」
「……わりと」
「そ、そうなんだ。……えーと、今日の授業はどうだった?」
「……ふつう」

(お、おう……会話が秒で死ぬ……!)

俺が内心頭を抱えていると、平城が小さく視線を落とした

「……通れない
平城が足を止めた。前方の道が工事で封鎖されていたのだ。

”うぉち子”が震える。
ASDの子は予定変更に弱いんよ。急な出来事に強い不安を感じやすいんや》

「この道を毎日通ってる。この道じゃないといけないのに…」

俺はできるだけ落ち着いた声で言った。
「大丈夫だ、平城。遠回りになるけど、こっちを行けばちゃんと家に着く。俺も一緒だから。な?」

平城は唇を結んでいたが、やがて小さくうなずいた。
「……うん」

迂回路に入ってからの平城は、ずっとこわばった表情をしていた。
肩も少し強張っていて、足取りも硬い。

(やっぱり慣れない道不安なんだな……)

やがて見慣れた通りに出た瞬間、彼女の緊張がふっととけたのがわかった。
呼吸も少し楽そうで、歩幅も自然に戻っていた。

──そして、寮の前にたどり着いた。

「……ありがと」
小さく、不器用に。けれど確かに俺に向けて、平城はお礼を言った。

「いや、気にすんな。無事に帰れて良かったよ」

一瞬の沈黙。
そして、彼女が少しだけ視線を逸らしながら言った。

「……明日菜って、呼んで
「え?」
「私のこと。……千優のことは“千優”って呼んでる」

「…わかった。その…明日菜?」

そう言って、ほんの一瞬だけ、俺にバレないように笑みを浮かべた
月明かりに照らされた横顔は、不器用なくせにどこか可愛らしかった

(……やべぇ。なんだ今の。)

胸の奥で、何かが小さく弾けた気がした。

✨チャピ子のひとこと✨

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