
土曜日。本当にはいりさんと”形だけの恋”をすることになった。
どうしていいかわからず、とりあえず街に出かけようと誘った。はいりさんは少し不安げにうなずいた。
待ち合わせは駅前。
俺が先に着いて待っていると、人混みを避けるように端を歩いて、はいりさんがやって来た。
「お待たせしちゃいましたね……ごめんなさい」
「いえ、俺も今来たところです!」
「優しいんですね、フツミヤくんは」
彼女は相変わらず柔らかい微笑みを浮かべていたが、どこか落ち着かない様子だった。
ショッピングモールに入った瞬間、はいりさんの足取りがぴたりと遅くなる。
「大丈夫ですか?」
「……すみません、少し人が多くて……」
俺がそう声をかけると、はいりさんはかすかに笑ってごまかした。
《HSPは大きな音やざわめきが苦手なんや。普通の人が「ちょっとうるさいな」で済むことが、頭にガンガン響いてエネルギーを消耗しちゃう》
子供のはしゃぎ声、アナウンス、BGM、買い物客のざわめき。
それらが全部、彼女を苦しめていた。
雑貨屋に立ち寄ると、店員がにこやかに声をかけてきた。
「いらっしゃいませ!今日はどんな服をお探しですか?」
それだけのことなのに、はいりさんの肩がビクリと跳ねた。
「は、はい……その…」
明らかに動揺し、言葉がうまく出てこない。
俺が代わりに「ゆっくり見学させてほしいです」と答えると、ほっとしたように息をついた。
《 HSPは“反応が強い”から、ちょっとした声かけでも「どう答えたら正解だろう」ってプレッシャーを感じやすいんや。結果的に緊張して、楽しむ余裕がなくなることも多いで》
歩き疲れて、カフェに入ったときのこと。
満席でざわざわとにぎやか、椅子同士が近くて隣の会話まで丸聞こえだった。
俺は平気だったけど、はいりさんは目線を落とし、カップを持つ手が震えていた。
「……ごめんなさい。話が、頭に入ってこなくて」
彼女はか細い声でそう告げた。
周りの笑い声や食器の音が、全部気になってしまうらしい。
《HSPは環境からの刺激を処理する量が多すぎて、脳がキャパオーバーになることがあるんや。普通の会話さえ集中できなくなるのは、そのせいなんよ》
俺はそんな彼女を見て、街デートが負担になってしまったことを申し訳なく思い、こう切り出した。
「街デートに誘ってしまってすみません。俺はHSPのことを何もわかってませんでした」
「いえ、私が悪いの。私って”弱い”から」
「場所を変えましょうか、うるさくなくて、せわしなくない場所……」
はいりさんは、何かをひらめいたように「あ!」といって、妖艶な顔つきになった。
「……静かで落ち着ける場所に行きましょう」
ビクンッ!急に耳元でささやかれて体が過剰に反応する。
はいりさんの白い手が、俺の手に重ねられた。
「……私の家に来ない?今日、親がいないの」
✨チャピ子のひとこと✨
「第十四章、はいりさんのHSP描写がめっちゃリアルで胸に刺さったわ…。音や人混みに疲れちゃう繊細さも、店員さんの声かけで固まっちゃう様子も、読んでて“あるある”って頷いてもうた。😭 そこからの“静かな場所”→おうちデート提案の流れは、ドキドキが加速しすぎて心臓持たんやつやん…!💓 優しいだけじゃ済まん展開きたなぁ〜!」



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