
朝、教室に行くと二人がいた。
「あの、ご両人。放課後カフェテリアにきてもらえますか?」
「何で敬語なの?ウケる!」
「…わかった」
その日の授業は全く耳に入らなかった。
放課後のカフェテリア。
ぎゅっと拳を握りしめ、俺は二人を前に深く息を吸った。
「……俺は、宇都宮通は…田所千優を選びます」
その一言に、明日菜の肩が小さく揺れた。
「だから……明日菜とは付き合えない。ごめん」
静かに、はっきりと告げる。
「でもな──」
俺は真っ直ぐ、明日菜を見つめる。
「こんなに魅力的な女の子から“好き”って言ってもらえて、俺……心の底から嬉しかった。勇気を出してくれて、ありがとう」
明日菜は唇をきゅっと噛み、俯きそうになったが、なんとか顔を上げた。
頬は熱を帯び、瞳はかすかに潤んでいる。
「……そんなふうに言われたら……どんな顔していいか…わからない」
声は震えていたけど、ちゃんと笑顔を作ろうとしていた。
千優がそれを横目で見て、微笑む。
「今のあすちゃん最高にかわいい!」
明日菜がすがすがしい笑顔で微笑んだ。
「──青春だねぇ。実にいい」
突然、後ろから聞き慣れた落ち着いた声がした。
振り返ると、カイリさんが腕を組んで立っている。
その隣には、申し訳なさそうにするはいりさん。
「なっ……いつから見てたんですか!?」
俺が思わず声を荒げると、カイリさんは涼しい顔で答えた。
「最初からに決まっているだろう。観察は科学の基本だ」
はいりさんが手をひらひら振りながら、にやにやと口を挟む。
「ごめんね、こんなところを邪魔しちゃって。でもフツミヤくんかっこよかったわ」
俺は頭を抱えたくなった。
カイリさんはさらに一歩前に出て、静かに問いかける。
「──二人と恋をしてみてどうだ?“誤診”だと感じたか?」
息を呑む俺。
けど、答えはもう決まっていた。
「いや……千優はまごうことなきADHD。明日菜も間違いなくASDだ」
二人ともぽかんと口を開け、同時に俺を見た。
「……どーいうこと?」
千優が首を傾げ、明日菜も小さく「……説明して」と呟く。
その空気を切り裂くように、カイリさんが眼鏡を押し上げる。
「実はだな──」
「待ってください!」
俺は思わず立ち上がった。
「……自分から話します」
深呼吸して、二人をまっすぐに見つめる。
「俺が千優と明日菜と距離を縮めたのは……“誤診者”を探すための実験の一環だった。
きっかけこそ作為的だった。でも──」
千優の目が揺れる。
「……じゃあ、私を好きって気持ちも嘘なの?」
「そんなことはない!」
思わず拳を握りしめる。
「きっかけはどうあれ……千優を好きになったこの気持ちは、本物だ!」
その一言に、千優は数秒の沈黙のあと、ふっと息を吐いて笑った。
「……それなら許す!」
場の空気が少し緩んだところで、カイリさんがさらりと言葉を継ぐ。
「では次は──はいりと恋をしてみてくれ」
「はぁ!? そんなの千優が許すわけ──」
「いいよ」
千優の口から出たのは、まさかの即答だった。
「えっ……」俺は固まる。
千優は腕を組んで胸を張る。
「私が第一婦人なら許す!」
「な、なに言ってんだお前は……!」
仕方なく、俺は大きく息をついた。
「……”依頼”を引き受けた以上協力はします。でもこれは形だけだ。もう恋はしません」
カイリさんは満足げに頷いた。
「それで結構」
そして隣のはいりさんへ視線を向ける。
「はいり。お前はどうだ?」
はいりさんは少し頬を赤らめて、それでも真剣な声で答えた。
「本来こんなことはおかしいって思う。でも……私も、自分が本当にHSPなのか確かめたいの。こんなこと、フツミヤくんしか頼めない。……私と”形だけの恋”をしてくれないかしら?」
その言葉と同時に、はいりのしなやかな体つきが俺の視界を圧迫する。
おしとやかな微笑み、艶やかな髪──そして巨乳。
(……お、落ち着け俺。形だけだ、形だけ……!)
ぐらつく心を必死に抑えながら、俺は返事を飲み込んだ。
「面白そうなことになってきたね!だからあすちゃんも身を引くとかなし!みんなでフツミヤくんをシェアしていこう!」
「…まさか…こんなことになるなんて」
カイリが淡々と結論を下す。
「──いっそのこと、ニア研ハーレムを築けばいい」
「誰が築くかーーっ!」
俺の叫びがカフェテリアに響き渡った。
✨チャピ子のひとこと✨
「第十三章、タイトル通り“運命の日”すぎたやん!😳 フツミヤくんがついに千優を選ぶシーンは胸アツやったし、明日菜ちゃんの涙ぐみながらも笑おうとする強さにうるっときたわ…。そこにカイリさん&はいりさん乱入で、まさかの“ニア研ハーレム構想”とか展開ぶっ飛びすぎ🤣 青春の切なさとラブコメのカオスが同居してて、まさにジェットコースター回やな〜!」



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