
「さあ、今日は全力で楽しもうね!」
やけに上機嫌な我が妹、憂。
「うん!楽しもうね憂!……お邪魔なのが一匹くっついてきてるけど」
「それはお前だ!兄妹水入らずのお出かけを邪魔するな」
早速、俺と鳴門は睨み合う。
「わかってると思うけど、今日は絶対喧嘩禁止ね!ね!」
「「はい」」
憂の迫力ある声色に、俺と鳴門は渋々うなずいた。
早速、手近な服屋に入る。
Tシャツコーナーに目をやった瞬間、俺は思わず叫んだ。
「おー! 起動兵士ガンバムがウニクロTシャツとコラボしてるじゃん! 激熱!」
横からすかさず鳴門の毒舌が飛んでくる。
「オタクキモッ! 中学生かよ」
「ガンバムは大人のホビーだ。お前みたいな脳みそ中学生には理解できないだろうがな」
「はぁ? マジむかつくんですけど!? あんたこそ中学生みたいなバングルして! 全然似合ってないんですけど!」
――一瞬、空気が凍った。
俺の手首に巻かれた革のバングル。
それは憂が誕生日にくれた、大切なものだ。
「……静ちゃん、それ……」
憂の声が低くなる。
「私がプレゼントしたやつだよ」
鳴門の目が大きく揺れる。
「あ……いや、アタシは、その……」
けれど憂は聞かなかった。
「人の気持ちも知らないで……もういい!」
怒りをあらわにして、憂は店を飛び出していった。
残された俺と鳴門。
鳴門はバングルを見つめながら、唇を噛んで小さくつぶやいた。
「……本当は似合ってるって思ってたのに……。なんで、こんな言い方しかできないんだろ」
憂が駆け出していった店の出口を、俺と鳴門はただ呆然と見つめていた。
あの明るい声が消えて、急に世界から色が抜けたみたいだった。
鳴門は膝に手を置き、うつむいたままかすれた声を絞り出す。
「……嫌われた。絶対……嫌われた……。憂に嫌われたら……わたし、生きていけないのに」
肩が震えている。さっきまでの強気は跡形もなかった。
俺はため息をついて、手首のバングルを軽く撫でた。
「……お前が言ったこと、あながち間違いでもないんだ。
このバングルをもらったのは、確かに中学生のころだったからな。俺だって、高校生になって少し子供っぽいかもって思うこともある。けど……それでも、いいと思ってつけてるんだ」
鳴門が涙をにじませながら、俺の手首をじっと見つめる。
「なぁ、鳴門。憂はなんで今回、3人で買い物に行こうって言い出したと思う?」
「……え? わかんない」
「多分だけど……俺と鳴門に仲良くなってほしかったんじゃないかな」
「……そんなこと……全然気づかなかった」
鳴門の声は小さくて、今にも消えてしまいそうだった。
「俺は気づいてた。けど、その望みを叶えてやれなかった。俺も大人げなかったんだ」
深く息を吐いてから、俺は鳴門に頭を下げる。
「鳴門……ごめんな」
鳴門は目を見開き、何か言おうとして、結局声にならずに唇を噛んだ。
悔しさと、安堵と、戸惑いが入り混じった複雑な表情だった。
「フリでいいから仲直りして、憂を迎えに行こう。憂のいる場所に心当たりがあるんだ。」
そう言って、俺は鳴門の手を取った。
✨チャピ子のひとこと✨
「うわぁ…この場面、胸えぐられるやつやん🥲 憂ちゃんの“仲良くなってほしい”って純粋な願いが切なくて、それを壊しちゃった瞬間の空気が痛いほど伝わってくる。鳴門の本当の気持ちがちらっと見えるところもグッとくるし、フツミヤくんの『仲直りしよう』って手を差し伸べる優しさに救われたわ。続きを早よ頼む!」



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