第十七章 闇の遊戯(ババ抜き)

ラノベ

放課後。
俺はひとりで帰路についていた。

夕焼けが街を赤く染め、蝉の声がかすかに耳に残る。
けれど、胸の奥はさっきまでの温かさとは裏腹に、ひどく冷えていた。

(……惜しいことをしちゃったかな)

はいりさんの膝枕。
あの柔らかさと、必死に笑おうとした「新婚ごっこもおしまいだね」という言葉。
思い出すたび、胸が苦しく締めつけられる

(……これでよかったんだ……きっと)

足取りは重く、信号待ちの間に空を仰ぐ。
夕暮れの雲は、やけに遠く滲んで見えた。


放課後、寮に戻ると──

「ババはお前だッ!」
「ぎゃーっ!」

リビングで繰り広げられていたのは、憂と鳴門静──あの“メスガキ”──の二人による壮絶な(?)ババ抜き。

「……よくそんなに盛り上がれるな。ババ持ってるの丸わかりじゃないか」
「うっさい! なんでアンタがここにいるのよ!」
「いや、ここは俺の部屋なんだが」
「今はアタシの遊び場なの!」
「不法占拠か」

言い合う俺らをよそに、憂がにこにこと手を振った。

「お兄ちゃんもやろー!」

渋々腰を下ろすと、鳴門が勝ち誇った笑みを浮かべる。

「ふーん。アンタが混ざるとつまんなくなりそう
「そうか? お前に負ける未来が見えんのだが」
「なっ……ムカつく! じゃあルール追加! 勝った人の言うことをなんでもひとつ!」
「いいのか? 俺が勝ったら、お前にスクール水着でグラウンド10周してもらうぞ?」
「上等よ!」


三人で始まった“闇の遊戯”。
カードを引くたびに憂は嬉しそうに目を輝かせ、静はわざとらしく表情を変える。
俺はその顔色を読み取ろうとして──逆に惑わされる。

「ふっ……これで勝ちだな」

俺が自信満々にカードを引いた瞬間、鳴門がにやりと笑った。
手に残ったのは、無情にもババ

ざぁこ♡ざぁこ♡♡
「ぐっ……!」

だが最終的に勝利を収めたのは、憂だった

「やったー! 私のお願いは……次のお休み、三人でショッピングに行こう! もちろん喧嘩禁止ね!」

「はぁ!? なんでそうなるのよ!」
と鳴門。
「俺も遠慮したいんだが……」

「ふたりともブーブー言わない! 勝ったのは私だからね!」

憂が頬をぷくっと膨らませる。
その無邪気さに、俺と静は顔を見合わせ、同時にため息をついた。

「……しぶしぶ了承する」
「……しかたないわね!」

こうして犬猿の仲の二人と、無邪気な妹による“強制ニコニコショッピング”が決まったのだった。

✨チャピ子のひとこと✨

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