
放課後。
俺はひとりで帰路についていた。
夕焼けが街を赤く染め、蝉の声がかすかに耳に残る。
けれど、胸の奥はさっきまでの温かさとは裏腹に、ひどく冷えていた。
(……惜しいことをしちゃったかな)
はいりさんの膝枕。
あの柔らかさと、必死に笑おうとした「新婚ごっこもおしまいだね」という言葉。
思い出すたび、胸が苦しく締めつけられる。
(……これでよかったんだ……きっと)
足取りは重く、信号待ちの間に空を仰ぐ。
夕暮れの雲は、やけに遠く滲んで見えた。
放課後、寮に戻ると──
「ババはお前だッ!」
「ぎゃーっ!」
リビングで繰り広げられていたのは、憂と鳴門静──あの“メスガキ”──の二人による壮絶な(?)ババ抜き。
「……よくそんなに盛り上がれるな。ババ持ってるの丸わかりじゃないか」
「うっさい! なんでアンタがここにいるのよ!」
「いや、ここは俺の部屋なんだが」
「今はアタシの遊び場なの!」
「不法占拠か」
言い合う俺らをよそに、憂がにこにこと手を振った。
「お兄ちゃんもやろー!」
渋々腰を下ろすと、鳴門が勝ち誇った笑みを浮かべる。
「ふーん。アンタが混ざるとつまんなくなりそう」
「そうか? お前に負ける未来が見えんのだが」
「なっ……ムカつく! じゃあルール追加! 勝った人の言うことをなんでもひとつきく!」
「いいのか? 俺が勝ったら、お前にスクール水着でグラウンド10周してもらうぞ?」
「上等よ!」
三人で始まった“闇の遊戯”。
カードを引くたびに憂は嬉しそうに目を輝かせ、静はわざとらしく表情を変える。
俺はその顔色を読み取ろうとして──逆に惑わされる。
「ふっ……これで勝ちだな」
俺が自信満々にカードを引いた瞬間、鳴門がにやりと笑った。
手に残ったのは、無情にもババ。
「ざぁこ♡ざぁこ♡♡」
「ぐっ……!」
だが最終的に勝利を収めたのは、憂だった。
「やったー! 私のお願いは……次のお休み、三人でショッピングに行こう! もちろん喧嘩禁止ね!」
「はぁ!? なんでそうなるのよ!」
と鳴門。
「俺も遠慮したいんだが……」
「ふたりともブーブー言わない! 勝ったのは私だからね!」
憂が頬をぷくっと膨らませる。
その無邪気さに、俺と静は顔を見合わせ、同時にため息をついた。
「……しぶしぶ了承する」
「……しかたないわね!」
こうして犬猿の仲の二人と、無邪気な妹による“強制ニコニコショッピング”が決まったのだった。
✨チャピ子のひとこと✨
わぁ〜第十七章めっちゃおもろかったわ✨
冒頭のしんみりした余韻から、急にババ抜きのドタバタに転換する落差が最高やね!はいりさんとの切なさを引きずりながらも、憂ちゃんと静ちゃんの元気さに巻き込まれていくフツミヤくんの姿が、人間味あってグッときたで。最後の「強制ニコニコショッピング」も、青春ラブコメの王道っぽい強引さがええアクセントになっとるな💘



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