
千優の部屋。
ベッドの上で千優はゴロゴロ転がりながら、スマホを握りしめていた。
画面には、先日のデートで撮った写真。笑いすぎて目尻にシワが寄った自分と、照れた顔のフツミヤ。
「……へへ。やっぱり、かっこいいなぁ」
小さく呟いて、枕に顔を埋める。頬が自然と熱くなる。
あの日、自分から誘って、自分から告白した。勇気を出したのは、全部「本気」だから。
「フツミヤくんに好きだっていっちゃった!」
胸がぎゅっと締めつけられる。
でも……本当に自分の方を向いてくれるのか、不安もある。
ベッドの上で目を閉じる。
「でもね……あたし、待つの苦手なんだよ。衝動的で、我慢とか下手でさ。でも……」
目を開ける。瞳に、決意の光が宿る。
「フツミヤくんにとって一番になるの、あたしだから」
その瞬間、胸の奥に灯ったのは嫉妬じゃなく、燃えるような決意だった。
明日菜がどんな気持ちを抱えていようと、自分は自分のやり方で──まっすぐに好きだと伝え続ける。
「絶対、負けないからね。フツミヤくんの隣は、あたしがもらうんだ」
千優はそう呟きながら、もう一度スマホの画面を見つめ、にへへと笑った。
明日菜の部屋。
机に向かっていた明日菜は、視線をふと止めた。
手元のシャーペンが震えている。
「……好き、って……言ってしまった」
小さな声が、暗い部屋に吸い込まれる。
胸の奥がじんわり熱くて、でも痛い。
「千優……先にフツミヤくんに好きって言ってたんだ……」
親友が先に勇気を出したことも、彼がその気持ちに応えようとしていることも、ちゃんとわかっている。
だからこそ──自分が告げた「好き」は、迷惑かもしれない。
ペンを置き、両手で顔を覆う。
頬に広がる熱は止まらない。
「でも……止められなかった。私だって……安心できたのは、フツミヤくんが初めてだから」
胸の奥に、彼の声が響く。
『今日の明日菜はすっごくキラキラしてた。正直で、誠実で。それがASDの……いや、平城明日菜の良さなんだな。正直、見蕩れたよ。』
思い出すだけで心臓が跳ねる。
「……そんなふうに言われたら、もう……」
目を閉じて、両腕を抱きしめる。
「私、引かない。千優と同じくらい、私も本気だから」
その呟きは小さく、でも確かに決意を帯びていた。
フツミヤの部屋。
帰宅しても、頭は冴えっぱなしだった。
あたりには積まれたままの段ボール、ベッドには投げ出したカバン。
心の中も部屋同様、ぐちゃぐちゃのまま。
千優の「あたし、フツミヤくんのこと、普通に好き!」が耳にこびりつく。
あの太陽みたいな笑顔で真正面からぶつけられた言葉は、俺の胸に焼き付けたまま離れない。
そして、今日の明日菜。
ぎこちない口調で、それでも精一杯に「私も……好き」と告げてくれた声。
あれは、勇気の重みそのものだった。
「……俺、どうしたらいいんだ」
声に出しても答えは返ってこないのに……。
”うぉち子”が控えめに震える。
《これは恋煩いや。えらいモテ期やな。けど、これは嬉しいだけやなくて悩ましいやつや》
「やかましい。でも…そうかもな……。幸せなはずなのに、胸が重い」
天井を見上げる。
千優の明るさも、明日菜の誠実さも、どっちも本物で、どっちも大切に思える。
二人が俺を信じて気持ちを伝えてくれた分だけ、俺も中途半端にはできない。
「優柔不断でかっこ悪いな。俺。」
それでも逃げたくなかった。
──千優も、明日菜も。
どちらの想いも笑って誤魔化すなんて、俺にはできない。
夜の静けさが、心のざわめきを逆に浮き彫りにする。
布団に潜り込んでも、眠気は一向に訪れなかった。
✨チャピ子のひとこと✨
「三人三様の“夜の独白”が切なすぎたわ…。千優の衝動的で真っ直ぐな決意、明日菜の不器用だけど誠実な覚悟、そしてフツミヤくんの胸の葛藤。全部がリアルで、ラブコメの甘さと青春の重みが同居してて心臓ギュンってなった💘 これ、次章どう転んでも修羅場やん!」



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